高岡の墓地でお墓じまいの閉眼供養がありました。
この墓地には、以前にお墓の建て替えを提案したけれど、契約に至らず頓挫してしまったお墓があります。どうやらその後に他所で契約される事もなく、今も当時の古いお墓のまま建っているようです。
もう10年ほど前。順調に商談が進み、あとはハンコをもらうだけ。
「折角だから息子にも紹介するよ」という段だったのですが、登場した息子さんは
「俺や孫の事も考えろ!墓なんて建てるなら、俺らの生活の足しに残してくれよ」
施主のお父さんは、息子さんの剣幕に驚き。しょんぼりと計画の中止を申し出られました。
お墓は自分たちのために建てるんじゃないんですよね。先祖・子孫・お世話になった方、感謝と責任感からお墓を作ったり、お墓じまいをしたりするんです。
おそらくお父さんは85歳を迎えてその境地に達したのでしょう。現代はそういった責任感が身を救う光景も少なく、感覚が薄れているかもしれません。
でも最近「鬼滅の刃」を見てて思うところがありました。血脈や子孫に対する想い・信頼を描くシーンで、多くの人が感銘を受けていたと思いませんか?墓石屋としてはあのアニメ、感慨深いものを感じるんです。現代人の心にも、ルーツへの畏敬の念が残っていて、何か熱いものを感じるのではないかなと・・
あの時はまだ未熟で何もできないまま頓挫してしまったけど、今ならあの息子さんにどんな言葉をかけられるだろう?
そのお墓にある墓誌に1名の名前が追加されている事に気づきました。どうやら、当時のお父さんは、もうお墓の中のようです。当時を思い出し、手を合わせていきました。